【総まとめ】2016年の映画たちから学んだことどうも、「しのの雑文部屋」管理人のしのでございます。2016年も今日の一日を残すのみとなりましたが、振り返ってみると、今年は映画業界がとんでもなく賑わった一年でした。まず思い浮かぶのは、興行収入200億以上をたたき出し堂々の邦画歴代二位、世界でも大評判となり日本を代表するアニメーション映画となった『君の名は。』クラウドファンディングから始め、様々な苦境を乗り越えて口コミの力で大ヒットし、映画ファンや著名人の「今年ベスト」を総なめにした映画『この世界の片隅に』ここまでアニメ映画ですが、アニメ映画といえば、そのとてつもない完成度でディズニーの力を改めて示した映画『ズートピア』、山田尚子監督による漫画の映画化作品である『映画 聲の形』も話...31Dec20162016年映画
『ローグ・ワン』はスター・ウォーズの再定義と拡張の物語である正直言って、私はこの映画をどう評価しようか非常に悩んでいます。単体の映画として見ても、『スター・ウォーズ』のスピンオフとして見てもどこかしらお粗末な部分があるのに、この映画がやりたかったことや、作品の本質的姿勢をひとたび顧みると評価が何十倍にも高くなってしまうという非常に面倒くさい作品なのです。というわけで、今回の記事ではかなりメタな視点での感想を書きたいと思います。すなわち、①単体の映画として見たときの感想②スピンオフとして見たときの感想③作品の「意図を汲んだ」感想を全て書きってしまいたいと思います。視点によって作品の評価が揺れ動くので、いっそのこと全視点でこの映画を評価してしまえという開き直りの記事です。(※作品のネタバレはほぼ...18Dec20162016年映画
映画『この世界の片隅に』から学ぶ「我々はなぜ生きるのか」アニメ映画『この世界の片隅に』が公開されて3週間ほど経ちました。動員も順調に伸びているようで、嬉しい限りです。この映画に関しては、「片隅」だけで終わらせてはいけません。さて、この映画は紛れもなく戦争映画ですが、実際問題それ以上の普遍性を帯びています。その理由は、ひとえにこの作品が「すずさんvs戦争」ではなく、「すずさんvs『日常を脅かすもの』」という姿勢で描かれているからだと思います。04Dec20162016年映画アニメ
『ファンタスティック・ビースト』と『ハリー・ポッター』の共通点を探る11月23日に公開された映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は、『ハリー・ポッター』シリーズの原作者J.K.ローリング氏と映画のスタッフたちが再び集結して生み出される新たなシリーズの第一作です。これから9年にわたり5部作となる予定の長いシリーズですが、その入口となる作品なだけあって、『ハリー・ポッター』を全く知らない人でも問題なく楽しめる作りになっていました。と同時に、ハリポタファンならば思わずニヤッとしてしまうような小ネタもいくつかあり(これについても今回の記事で詳しく書きます)、往年のファンも魅了する要素が満載だったというのがまず簡単な感想です。何より、『ハリー・ポッター』シリーズの完結から5年が経っているというの...23Nov20162016年映画
映画『この世界の片隅に』感想 〜誰かが誰かの居場所になること【ネタバレ】元気の出る戦争映画でした。という感想を見て、不謹慎だなと感じる方はいらっしゃると思います。戦争を扱っているのに、「元気の出る」なんて......と。それは、戦争というものを重く受け止めていることの現れでもあり、大切な態度ではあると思います。しかし、この映画は紛れもなく「元気の出る戦争映画」なのです。もっと言えば、そういう感想を堂々と口にすることの大切さを知らしめてくれる映画です。戦争というものを軽く扱うような作品では断じてなく、むしろ、これ以上ないほどに戦争というものに真摯に向き合わせ、考えさせてくれる作品なのです。そしてもう一つ忘れてはならないのが、この映画は戦争映画であると同時に、その戦争時代を生き抜いた人々の映画であるというこ...13Nov20162016年映画アニメ
映画『何者』感想 〜君が君でしかないことの素晴らしさ【ネタバレ】観てきましたよ! いやー楽しかった。Twitter等で反応を見てみると、人によって全く評価が違うようで、酷評もあれば絶賛もあるという両極端なリアクションが一斉に流れてきた面白さを今でも覚えています。さて、私の感想を申し上げますと、この映画......とーっても優しいポジティブな映画だと思いました。あらすじや予告編の感じからして、あえて人間の負の部分をすごく嫌味ったらしく描く説教じみた内容だと勝手に思っていたのですが、これが全く違いました。むしろ、そういった我々の負の部分を肯定も否定もせずまるごと抱きしめて、それでも頑張ろう、それでも生きていこう、と優しく励ましてくれる作品でした。これが今回の結論です。ええーっ、嘘だよ。そんな優しさは...24Oct20162016年映画
『GANTZ:O』は映像全振りで創作表現の可能性を広げた!【ネタバレ無】異星人とのサバイバルゲームを描いた奥浩哉さんの大ヒットコミック『GANTZ』を、現時点の日本における最高品質の3DCGアニメーションで映像化した作品『GANTZ:O』。もう初めに感想を言ってしまいますと、この映画の最大の功績は、漫画の映像化に際し「日本ではアウェイ」だと分かっていながらも(出典元)、あえてフルCG映画という方式を選び、そして見事それを成功させたことです。正直、映画的な見せ方や、演出、ストーリーの巧さはなかったです。むしろヘタでした。しかし、そういうマイナスをかき消すほどの「映像のすごさ」をガツンとみせてくれます。正直、映像だけでここまで評価したくなった作品は初めてかもしれません。15Oct20162016年映画アニメ
『君の名は。』と名曲『赤黄色の金木犀』の美しき共通性10月に入りました。ようやく涼しくなってきたようで、束の間の秋を感じます。そんな中、映画『君の名は。』の勢いはとどまるところを知りません。つくづく恐ろしい映画です。さて、秋ということで、フジファブリックというバンドの名曲『赤黄色の金木犀』を聴いていたのですが、ピーンとくるものがありました。この曲、まさに『君の名は。』なのでは!?ちょっとしたアハ体験でした。まさか、なんの関連性もない2つの名作がこんなところで繋がるとは。というわけで今回の記事では、フジファブリックの曲『赤黄色の金木犀』の解釈をするのですが、単なる曲の解釈記事では終わらせません。そこからさらに、私の感じ取った『君の名は。』との共通性に触れていきたいと思います。曲の解釈と...07Oct20162016年映画音楽アニメ
映画『聲の形』感想 〜コミュニケーションの残虐性と尊さ【ネタバレ】どうなってるんだ2016年。『シン・ゴジラ』『君の名は。』そして『聲の形』......。映画、それも日本産の映画が、どれもこれも魔球なんです。何が起こったのでしょうか。怪奇現象です。こわいです。さて、『聲の形』ですが、これは時期的に絶対『君の名は。』と比較されてしまいますよね。でも、これはどっちが優れてるとかではなくて、完全に好みの問題だと思います。18Sep20162016年映画アニメ
『スーサイド・スクワッド』は、どうすれば面白くなったか【ネタバレ】今回の記事タイトルはかなり挑戦的です。しかし、この記事のタイトルはこれ以外ありえませんでした。というのも、この記事は単に『スーサイド・スクワッド』の感想記事ではなく、「作品の面白さ」という普遍的なことについての私の意見を述べたものだからです。まずこの作品のテーマであるのは、「善悪とは何か」ということです。作品のテイストに反して高尚なテーマに聞こえますが、要は「こいつ実は良い奴じゃん!」「こいつサイテーだな!」という観客の反応を狙った作品なのです。実際、この映画を見終わったあと、タスク・フォースXの面々について第一に思うのは、「あいつらそこまで悪人でもなかったな」というようなことでしょう。そういった主旨の感想を観客に言わせるための映画...12Sep20162016年映画
『君の名は。』を震災後映画の文脈で語るに際して【ネタバレ】『君の名は。』は、「物理的距離」「時間的距離」「生死の距離」といったあらゆる理不尽な距離を、「互いの名前を求める」という純粋でエモーショナルな想いが乗り越えてゆく物語である。予め天によって定まっているという意味の「運命」を徹底的に否定し、自分たちの「想い」によって能動的に定めるという意味での「運命」を徹底的に肯定する物語である。非運命から、運命が生まれる希望を描く物語である。前回の感想記事で、私は以上のようなことを述べました。30Aug20162016年映画アニメ
『君の名は。』感想記事 〜運命よりも素敵なものを信じよう【ネタバレ】新海誠監督作品の最新作。初めてタイトルに句点が使用されていることからも、彼の今までの作品の集大成をみせよう、という凄みを感じるこの映画。題材は「男女入れ替わり」というよくあるもの。予告でもその点を猛プッシュしていたので、流石にもう一捻り入れてくると思ったのですが、予想通りでした。単なるカップル御用達映画ではない、確固たるメッセージを備えた作品だったと思います。都会と田舎、糸守の神、カタワレ時、組紐、彗星、そして「ムスビ」。様々な要素が融和して、この作品を強いものにしています。では、果たしてこの作品はどこが「強い」のか。その「強さ」によって、我々は何を信じることができるのか。今回の記事では、そんなことについて書き綴っていこうと思います...27Aug20162016年映画アニメ