映画『夜は短し歩けよ乙女』感想 〜歩き続けろ夜が明けるまで【ネタバレ】映画『夜は短し歩けよ乙女』は森見登美彦氏による同名小説をアニメ映画化したものです。実は私はこの原作小説を読んでおらず、予告編を観て「先輩が乙女を追っかける青春物語なのかな―」程度の認識で映画館に足を運びました。内容よりも、湯浅監督によるケレン味溢れるアニメーション表現のほうを堪能する気持ちでいたのですが……。22Apr20172017年映画アニメ
『ひるね姫』感想 〜継承される夢と発見する自己【ネタバレ】正直言ってかなり不器用な作品です。「考えるな、感じろ」という語り方をしていることは間違いないのですが、「感じる前に考えてしまう」作りになってしまっています。結果として、「面白い部分もあったけど、結局何の話だったのかよくわからない」というような、それこそ「寝起き」のような感想になりがちです。実際、私もそうなりました。ただ、本作が何か重要なことを伝えている気がするのも事実です。夢というモチーフと、そこで展開される魔法をめぐる物語。それが全編を通して確かに主人公の現実や物語とリンクしていき、同時に「親子の物語」という小さな物語が、より大きな物語ともリンクしていく構造。不器用ではありながらも、何かを伝えようとしている気がするのです。従って、...18Mar20172017年映画アニメ
映画『この世界の片隅に』から学ぶ「我々はなぜ生きるのか」アニメ映画『この世界の片隅に』が公開されて3週間ほど経ちました。動員も順調に伸びているようで、嬉しい限りです。この映画に関しては、「片隅」だけで終わらせてはいけません。さて、この映画は紛れもなく戦争映画ですが、実際問題それ以上の普遍性を帯びています。その理由は、ひとえにこの作品が「すずさんvs戦争」ではなく、「すずさんvs『日常を脅かすもの』」という姿勢で描かれているからだと思います。04Dec20162016年映画アニメ
映画『この世界の片隅に』感想 〜誰かが誰かの居場所になること【ネタバレ】元気の出る戦争映画でした。という感想を見て、不謹慎だなと感じる方はいらっしゃると思います。戦争を扱っているのに、「元気の出る」なんて......と。それは、戦争というものを重く受け止めていることの現れでもあり、大切な態度ではあると思います。しかし、この映画は紛れもなく「元気の出る戦争映画」なのです。もっと言えば、そういう感想を堂々と口にすることの大切さを知らしめてくれる映画です。戦争というものを軽く扱うような作品では断じてなく、むしろ、これ以上ないほどに戦争というものに真摯に向き合わせ、考えさせてくれる作品なのです。そしてもう一つ忘れてはならないのが、この映画は戦争映画であると同時に、その戦争時代を生き抜いた人々の映画であるというこ...13Nov20162016年映画アニメ
『GANTZ:O』は映像全振りで創作表現の可能性を広げた!【ネタバレ無】異星人とのサバイバルゲームを描いた奥浩哉さんの大ヒットコミック『GANTZ』を、現時点の日本における最高品質の3DCGアニメーションで映像化した作品『GANTZ:O』。もう初めに感想を言ってしまいますと、この映画の最大の功績は、漫画の映像化に際し「日本ではアウェイ」だと分かっていながらも(出典元)、あえてフルCG映画という方式を選び、そして見事それを成功させたことです。正直、映画的な見せ方や、演出、ストーリーの巧さはなかったです。むしろヘタでした。しかし、そういうマイナスをかき消すほどの「映像のすごさ」をガツンとみせてくれます。正直、映像だけでここまで評価したくなった作品は初めてかもしれません。15Oct20162016年映画アニメ
『君の名は。』と名曲『赤黄色の金木犀』の美しき共通性10月に入りました。ようやく涼しくなってきたようで、束の間の秋を感じます。そんな中、映画『君の名は。』の勢いはとどまるところを知りません。つくづく恐ろしい映画です。さて、秋ということで、フジファブリックというバンドの名曲『赤黄色の金木犀』を聴いていたのですが、ピーンとくるものがありました。この曲、まさに『君の名は。』なのでは!?ちょっとしたアハ体験でした。まさか、なんの関連性もない2つの名作がこんなところで繋がるとは。というわけで今回の記事では、フジファブリックの曲『赤黄色の金木犀』の解釈をするのですが、単なる曲の解釈記事では終わらせません。そこからさらに、私の感じ取った『君の名は。』との共通性に触れていきたいと思います。曲の解釈と...07Oct20162016年映画音楽アニメ
映画『聲の形』感想 〜コミュニケーションの残虐性と尊さ【ネタバレ】どうなってるんだ2016年。『シン・ゴジラ』『君の名は。』そして『聲の形』......。映画、それも日本産の映画が、どれもこれも魔球なんです。何が起こったのでしょうか。怪奇現象です。こわいです。さて、『聲の形』ですが、これは時期的に絶対『君の名は。』と比較されてしまいますよね。でも、これはどっちが優れてるとかではなくて、完全に好みの問題だと思います。18Sep20162016年映画アニメ
『君の名は。』を震災後映画の文脈で語るに際して【ネタバレ】『君の名は。』は、「物理的距離」「時間的距離」「生死の距離」といったあらゆる理不尽な距離を、「互いの名前を求める」という純粋でエモーショナルな想いが乗り越えてゆく物語である。予め天によって定まっているという意味の「運命」を徹底的に否定し、自分たちの「想い」によって能動的に定めるという意味での「運命」を徹底的に肯定する物語である。非運命から、運命が生まれる希望を描く物語である。前回の感想記事で、私は以上のようなことを述べました。30Aug20162016年映画アニメ
『君の名は。』感想記事 〜運命よりも素敵なものを信じよう【ネタバレ】新海誠監督作品の最新作。初めてタイトルに句点が使用されていることからも、彼の今までの作品の集大成をみせよう、という凄みを感じるこの映画。題材は「男女入れ替わり」というよくあるもの。予告でもその点を猛プッシュしていたので、流石にもう一捻り入れてくると思ったのですが、予想通りでした。単なるカップル御用達映画ではない、確固たるメッセージを備えた作品だったと思います。都会と田舎、糸守の神、カタワレ時、組紐、彗星、そして「ムスビ」。様々な要素が融和して、この作品を強いものにしています。では、果たしてこの作品はどこが「強い」のか。その「強さ」によって、我々は何を信じることができるのか。今回の記事では、そんなことについて書き綴っていこうと思います...27Aug20162016年映画アニメ
『ファインディング・ドリー』のメッセージを探す 〜ファインディング・『ファインディング・ドリー』【ネタバレ】〈あらすじ〉あなたの忘れられない《思い出》は何ですか?それは、何年たっても、どんなことがあっても、決して色あせることのない、かけがえのない宝物…。カクレクマノミのニモのいちばんの親友で、何でもすぐに忘れてしまうドリーが、たったひとつ忘れられなかったもの──それは、小さなころの《家族の思い出》でした。どうして、その思い出だけを忘れなかったのだろう?そして、ドリーの家族はいったいどこに…?謎に包まれた秘密を解く鍵は、海の生き物にとって、禁断の場所=《人間の世界》に隠されていました…。(公式サイトより引用)〈はじめに〉映画ファインディング・ドリーは、この記事で書いた通り、「見りゃわかる」映画でした。それもそのはずで、なぜならただでさえピク...23Jul20162016年映画アニメ
『ファインディング・ドリー』からPIXARの哲学を垣間見る【ネタバレ】前作から実に13年ぶりの続編。すでにアメリカでは歴代アニメーション作品のオープニングNo.1記録を樹立する大ヒットとなっています。今回の記事では、ちょっとメタな観点から、「PIXAR映画」が目的とするものは何なのかということについて考えていきます。〈あらすじ〉あなたの忘れられない《思い出》は何ですか? それは、何年たっても、どんなことがあっても、決して色あせることのない、かけがえのない宝物…。カクレクマノミのニモのいちばんの親友で、何でもすぐに忘れてしまうドリーが、たったひとつ忘れられなかったもの──それは、小さなころの《家族の思い出》でした。どうして、その思い出だけを忘れなかったのだろう?そして、ドリーの家族はいったいどこに…?謎...17Jul20162016年映画アニメ
『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』感想 〜リメイク作品のあるべき姿【ネタバレ】本日見てまいりました。いやーよかった。よかったですよこれは。僕はこの映画を見る前に、旧作の方を復習として見ていて、その感想もTwitterに載せたんですが、何が良かったかって、旧作の不満点がほぼ解消されていること!もっと言えば、不満点を解消するだけでなく、リメイクとしてよりよいものに昇華させていること!これに尽きます。以下で詳しく書いていきます。〈あらすじ〉史上最大の家出!? 7万年前の日本へ!!家出を決心したのび太たち5人は、タイムマシンで、誰もいない7万年前の日本に行くことに。原始時代の日本で、自分たちだけのパラダイスを作り、たっぷり遊んだのび太たちは、いったん家に帰ることにしたが、なぜか現代で原始人のククルと出会う。どうやら時...10Apr20162016年映画アニメ